国の進路をめぐり対立軸がはっきりした選挙だった。フランス国民は新しい大統領に市場・競争原理を重視する与党・国民運動連合のサルコジ前内相を選んだ。弱者保護を主張し初の女性大統領を目指した野党・社会党のロワイヤル候補は及ばなかった。自由競争を強めてグローバリズム経済に勝ち残ろうとする路線を選んだ意味は大きい。
サルコジ氏は勝利演説で「国民は過去の理想、習慣、行動からの決別を選んだ。変革を選択したのだ」と述べた。転換を掲げたからこそ勝利したという自信が読み取れる。伝統的な政治家像からみるとアウトサイダーだ。ハンガリー移民の子供であり、エリート養成校を卒業した官僚出身ではない。シラク大統領に反抗しながら、与党の大統領候補となった。05年の移民系若者の暴動では内相として治安回復に取り組み、こわもての姿勢を見せた。過去にとらわれない新しく強い指導者のイメージが、過半数の支持者を引き付けた。
地球規模の経済活動や欧州連合(EU)拡大が進む中、フランスとは何か、という基本問題を問いかけた選挙だった。争点の移民政策で、サルコジ氏は不法移民の摘発や「移民・国家アイデンティティー省」創設を主張した。フランスは外国人が国籍を取得し社会に同化すれば差別しないという統合政策をとってきた。だが、貧しい移民の間で社会への不満が広がり05年暴動で爆発した。肌の色やイスラム信仰といった一目で違いがわかる人々を同じ市民としてどこまで受け入れるか。国家理念にかかわる課題だ。
週35時間労働制の緩和も注目したい。ワークシェアリングにより社会全体で雇用を創出しようと7年前に導入し、労働時間は欧州でも短くなった。サルコジ氏は超過勤務手当の増額や減税で「もっと働き、もっと稼ぐ」仕組みを提唱した。失業率は8.3%と高く、中でも若年層は20%を上回る。雇用を生み出すのは労働時間削減より経済成長と考え、企業への制約を減らす発想だ。
フランスは高福祉高負担の制度を作り、労働者を保護してきたし、ロワイヤル氏は規制緩和より格差是正を訴えた。今回の選挙は英米型の自由競争モデルが浸透する契機となりそうだ。格差社会は日本でも問題だ。フランスの選択が成功するか注視したい。
外交では、イラク開戦反対で冷え込んだ米国との関係が改善されそうだ。シラク氏は知日家だったが、サルコジ氏の関心は日本より中国に向かうかもしれない。欧州憲法の批准も変化がありそうだ。
フランス革命で民衆が叫んだ「自由、平等、友愛」は現在の憲法でも「共和国の標語」と規定されている。ロワイヤル氏が平等を求めたのに対し、サルコジ氏は市場競争の自由で対抗した。将来に不安を感じる国民は、平等より自由のサルコジ氏に賭けた。とはいえ、半数近くは福祉や平等原理への期待を捨てていない。三つ目の標語である友愛を生かした指導力をサルコジ氏に期待したい。
毎日新聞 2007年5月8日 0時09分
今週はじめ、フランスで新大統領が決った。
アメリカの大統領のように代理人による選挙でもなく、
日本の首相のように衆議院議員の中から選ばれるわけでもなく、
ある意味、純粋に国民から選ばれた大統領!
こういうのを見ると、やはり日本でも首相は公選、
内閣は議員内閣制を廃止すべきかと。
在野に多くの有能な人材がいるのに活用できていない。
それと議会こそ日本の政治の害悪になっていると思いませんか?
国会から村議会まで、ホントにロクでもない奴が多すぎる。
今回のフランス大統領選挙をみて、今更ながらそんなことを思うのでした。
- 関連記事
-
スポンサーサイト